月と鹿と

2012.05.06

月が大接近した昨日の夕刻、桃子が軽トラを始動させ、縄や渡板などの道具をそそくさと積み始めて、「なにするの？」って聞くまで言ってくれなかったけど「用水路に落ちた鹿を捕まえて山に返す」との事。

数日前から落ちているのは知ってたけど、人が手を出す事ではないと私は思ってました。勇ましい女だけど一人では難しいので、自分も長靴に履き替えて、用水路に入りそれぞれ縄を持って挟み撃ち。近くで見て気配を感じて解った、その鹿は若いが盲目で衰弱している。

何度か挟み撃ちを繰り返してやっと取り押さえた。その瞬間、上で尻尾を振って笑顔で見ていたアイヌ犬シータが苦手な水の中に降りて来て、いきなり鹿の喉ものに噛み付いてきた。アイヌの本能が目覚めた瞬間だった。衰弱した鹿は力を振り絞って暴れるものの、私の力で抑えられるくらいしか動けない。用水路から引き上げ、軽トラの荷台にのせて、鹿柵の外に放ちました。長くは生きられないと思いますが、生まれた場所で死ねることでしょう。

気付けば鹿も人も犬も泥んこ、そしてそれぞれの本能の在処にも少し気付いた月夜でした。